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トルコ アタチュルク国際空港爆破事件(2016.5.28)からの教訓

 ダッカのテロ事件の衝撃で、もはや忘れかけられている気配のトルコのアタチュルク国際空港銃撃・爆破テロ事件ですが、実はこのテロ事件はかつてのテロ事件とは少々異なる特徴があります。今までの常識が覆された感があるのです。今回はその点について説明して、あなたが世界各国の空港を利用する際の安全確保にお役立ていただきたいと思います。


 まず、アタチュルク国際空港はトルコ最大の空港で年間6180万人が利用します(2015年)。ちなみに成田国際空港は7530万人(2015年)ですから、ほぼ成田並の旅客数です。

 また、トルコは親日国として知られ、遺跡観光などを目的に学生から年配まで幅広い世代の日本人が訪れています。独立行政法人国際観光振興機構のまとめでは、2014年のトルコへの日本人渡航者数は17万550人。12年の20万3592人をピークにやや減少していますが、中東・中央アジア・北アフリカ地域では2番目に多いモロッコ(13年3万2184人)を引き離し、群を抜いて人気が高い状況です。


 さて、今回の事件の特徴を3点挙げてみます。

1、 時間帯が深夜だった(午後10時頃)
 
2、 事件現場が到着ロビーだった
 
3、 実行犯が外国から来た(ロシア、ウズベキスタン、キルギス)


  1、 については、私の対テロ講演会でお話してきたように、今まではテロが起こるのは朝や夕方 が多かったのです。割と混み合う時間帯だからです。でも、今回ターゲットに選ばれたアタチュルク国際空港のように、常に空港が混み合う場合には時間帯を無視して攻撃してくることが明らかになりました。注意すべきは、旅客数が多く、テロとの戦いを標榜してISを攻撃していて、イスラム教徒の多い国の空港となります。アメリカはそれとは別に最高度に危険です。最もISに恨みを買っている国だからです。不用不急なら、アメリカに行ってはいけません。

 ちなみに、旅客数の多い空港は以下の通りです。

■2015年世界空港旅客数ランキング(括弧内は旅客数、前年比の順)

1位:ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港:ATL(101,491,106/5.5%)

2位:北京国際空港:PEK(89,938,628/4.4%)

3位:ドバイ国際空港:DXB(78,010,265/10.7%)

4位:シカゴ・オヘア国際空港:ORD(76,949,504/9.8%)

5位:東京/羽田空港:HND(75,316,718/3.4%)

6位:ロンドン・ヒースロー空港:LHR(74,989,795/2.2%)

7位:ロサンゼルス国際空港:LAX(74,937,004/6.1%)

8位:香港国際空港:HKG(68,283,407/8.2%)

9位:パリ・シャルル・ド・ゴール国際空港:CDG(65,766,986/3.1%)

10位:ダラス・フォートワース国際空港:DFW(64,072,468/0.9%)

11位:イスタンブール・アタテュルク国際空港:IST(61,836,781/9.2%)

12位:フランクフルト国際空港:FRA(61,032,022/2.5%)

13位:上海浦東国際空港:PVG(60,053,387/16.3%)

14位:アムステルダム・スキポール国際空港:AMS(58,284,864/6.0%)

15位:ニューヨーク・ジョン・F・ケネディ国際空港:JFK(56,827,154/6.8%)

16位:シンガポール・チャンギ国際空港:SIN(55,449,000/2.5%)

17位:広州白雲国際空港:CAN(55,201,915/0.8%)

18位:ジャカルタ・スカルノハッタ国際空港:CGK(54,053,905/-5.5%)

19位:デンバー国際空港:DEN(54,014,502/1.0%)

20位:バンコク・スワンナプーム国際空港:BKK(52,902,110/14.0%)



2、については、今まで空港テロでは、出発ロビーが狙われるケースが多かったのです。人ごみが出来やすいからです。しかし、テロ対策が強化されたことで、今回は比較的テロ対策が手薄な入国ロビーも狙われたのでしょう。いずれにせよ、ロビーで長居をすれば、テロの可能性は高まります。誰でも出入りできる空港ロビーはなるべく短時間で通過しましょう。



3、これは対策の立てようもないことですが、陸続きの大陸においては、イスラム系の顔や服装をしていないテロ犯人が犯行を実施する可能性があるということです。顔かたちではなく、むしろ場違いな服装(猛暑の時期のジャケット)に注意すべきです。また、片方の手元を隠している人にも注意すべきです。その手に爆破スイッチや銃器が握られているかも知れないからです。



 さて、 これらはISが今年(2016年4月)自ら発表した拠点のある国のリストです。


 (イスラム国の世界の拠点)

1)広い領域支配を確立させている支部
 シリア、イラク

2)ある程度の領域支配を確立させている支部
 チェチェン、イエメン、エジプト、ナイジェリア、リビア、ダゲスタン、アフガニスタン、ニジェール、フィリピン、ソマリア

3)領域支配は確立させていないが部隊が秘密裏に活動を展開している支部
 サウジアラビア、トルコ、アルジェリア、フランス、チュニジア、レバノン、バングラデシュ

 
 この中で、エジプト、フィリピン、トルコ、フランスは日本人に馴染みの深い観光国なので当分は観光を控えたほうが良いと、私の対テロ講演会でも注意しました。しかし、バングラデシュについては、普通の人は行かない国だと思っていました(今でもですが)ので、特に言及しませんでしたが、テロの危険性が高い国に間違いありません。今後も依然として危険です。

 私は、有志連合として実際にシリアやイラクのISを爆撃している国もISのテロが起こる可能性が高いから、訪れないように警告しました。でも、そうなるとめぼしい観光国のほとんどが危ない国になってしまいました。残念です。


 さて、今年のラマダンは6月6日から7月5日ですから、明日までです。でも時差を考えると日本時間の明後日までは厳戒が必要です。この時期にアメリカに行く人は最悪です。テロが起こる、起こらないは別にしても、最も危険な国だからです。

 そして、それ以後の危険性としては、リオ・オリンピックです。ただでさえ国内問題の深刻な国です。はっきり言って、この時期にオリンピックを観にいくべきではありません。いろいろな意味でリスクが高すぎます。テレビで我慢しましょう。



 今回はトルコの爆弾テロ事件からの教訓をお伝えしました。あなたの安全をいつも願っています。



(リスク・アドバイザー 白井敬二)