安全は自分で守るもの

  特集記事(6)

なぜ止血帯講習が必要なのか?


 こんにちは。セキュリティ・アドバイザー白井です

 さて、2020年東京オリンピックが刻々と近づいています。テロ対策訓練もやたらと各地で行われていますが、それらのほとんどが現実感に乏しいものです。つまり、市民にとって実際に役立つはずのない訓練です。それは、いろいろな意味で言えます。 

 今行われているテロ訓練は公的機関の、公的機関による、公的機関のための訓練です。テロで狙われる一般市民が主体の訓練ではあありません。単なる行政機関同士の連携を確認するための予行演習にすぎないのです。

 また想定されるテロが画一的です。つまり、一人ないしは二人のテロ犯人がナイフ・拳銃・ライフル銃を持って、施設に入り込み、人質を取ります。それに対して警察官たちが取り囲み、警察犬に飛びかからせるか、一斉に飛びかかるというものがほとんどです。もちろん他に、爆発物や化学兵器に対する訓練もありますが、一律にテロは必ず失敗し、犯人は捕らえられるという筋書きです。
 
 ですが、実際のテロは人質など取らず、突然発砲するか、自爆する、あるいは自動車などで突っ込んできます。簡単に防止などできません。ですから、「テロは起こってしまう」という前提の訓練も当然必要なのです。そして、人的被害を最小限に止めるためにどうすべきかという訓練こそが今求められている訓練です。

 そういう意味で、いち早く閉鎖されてしまう(救急隊さえ出入りできない)テロ現場で、負傷者が自らの守るという観点から、止血帯を使うことは絶対に必要です。そしてそのためには、常に止血帯装着の訓練をしておくしかないのです。
 
 止血帯は四肢の動脈を損傷した場合の大量出血を止めて、命を守るために非常に効果があります。それはアフガニスタン戦争、イラク戦争でアメリカ軍が多くの死傷者を出す中で実証されたまぎれもない事実です。ですから、一部の医師がいまだに止血帯の市民使用に否定的な態度を取り続けているのは、無責任のそしりを免れません。助かるべき命を助けるために止血帯は有効であり、市民の訓練も適切な指導の元、広く積極的に進めるべきなのです。